最近、企業の開示資料で配当政策を調べてみると、以前からよく目にする「配当性向〇%以上」という言葉だけでなく、「DOE」という単語を目にする機会が多くなってきました。今回は、あまり見慣れない「DOE」について解説していきます。
DOEとは
DOEは、「Dividend on Equity ratio」の略で、日本語では「株主資本配当率」と呼ばれる財務指標です。
DOEは以下の計算法で計算されます。
DOE=配当総額÷株主資本(自己資本)×100=配当性向×自己資本利益率(ROE)
つまり、株主資本(自己資本)のうち、どれくらい配当金を支払うかを表す指標です。
配当性向との違い(DOEを見る意味)
企業の配当政策では、財務指標としては以前から配当性向が多く目にしていました。現状でも、配当性向はよく目にしますが、DOEとどのように違うのでしょうか。
配当性向は以下の計算法で計算されます。
配当性向=配当総額÷当期純利益×100
つまり、一会計期間中の利益のうち、どれくらい配当金を支払うかを表す指標です。
DOEと配当性向の計算式を比較すると、配当総額を前者は株主資本(自己資本)、後者は当期純利益で割って計算しています。
株主資本(自己資本)は、今までの当期純利益や配当金の支払い等の積み重ねてきたものに対して、当期純利益は、一会計期間中の利益です。そのため、株主資本(自己資本)の方が当期純利益より突発的な影響を受けにくいということです。一会計期間の当期純利益がマイナス(赤字)となる場合、配当性向通りに計算すると配当金はゼロとなりますが、DOE通りに計算すると株主資本(自己資本)がマイナスとならない限り、計算された配当金が支払われます。
実際の開示資料をもとにしたDOEと配当性向の比較
ここでは、GMOフィナンシャルホールディングスを例にして具体的に比較していきます。GMOフィナンシャルホールディングスは、配当政策として2026年12月期から「DOE(連結株主資本配当率)10%」を下限指標として導入しています。それまでは、配当性向のみを用いて配当金を計算していました。
DOEによる計算
2026年12月期から「DOE(連結株主資本配当率)10%」が下限となっています。そして、四半期ごとの配当金は1株当たり10.52円です。
GMOフィナンシャルホールディングスの場合、前期末(2025年12月期)の連結株主資本をDOEの計算における株主資本(自己資本)としているようです。
つまり、2026年1月~12月までの業績の影響にかかわらず、最低でも1株当たり10.52円を配当金として支払うということになります。
配当性向による計算
今度は少し古いですが、イメージをわかりやすくするため配当性向をもとに計算されていた2022年12月期を見てみましょう。当時は、「親会社株主に帰属する当期純利益に対する配当性向50%以上」を指標として配当金が計算されていました。
| 2022.12月期 | 第1四半期 | 第2四半期 | 第3四半期 | 第4四半期 | 合計 |
| 1株当たり 配当額 | 12.50円 | 8.50円 | 0円 | 0円 | 21円 |
年間の配当金の支払い実績は、21円ですが第3,4四半期はゼロとなっています。これは第3四半期に特別損失、第4四半期に貸倒引当金の計上があったことにより各四半期では赤字となってしまったためです。
DOEを用いて株式投資する場合の注意点
- 株主資本(自己資本)の定義を理解する:DOEは「配当総額÷株主資本(自己資本)×100」で計算されますが、会社によって「株主資本(自己資本)」の定義が異なります。いつの時点の株主資本(自己資本)か?連結、単体どちらの株主資本(自己資本)か?貸借対照表の株主資本(自己資本)の調整は必要か?など定義を理解しておく必要があります。
- 配当総額の定義を理解する:DOEは「配当総額÷株主資本(自己資本)×100」で計算されますが、会社によって「配当総額」の定義が異なります。自社株式の取得は含めるか?など定義を理解しておく必要があります。
まとめ
配当性向は、当期純利益が毎年上昇している場合は、毎年配当金をしっかりもらえますが、大幅に業績が悪化すると、当然、配当金も大幅減少してしまいます。対して、DOEは過去の利益等の積み上げであるため、一度大幅に業績が悪化しても、配当金の金額への影響は配当性向に比べ一般的に小さくなります。
企業の開示資料をみると、配当政策としてDOEを採用する企業が増えていますが、DOEを下限として配当性向で計算した配当金といずれか大きい方を支払う企業もよく見かけます。この配当政策は、両者のいいとこどりともいえます。下限額が具体的な金額を開示されておらず自身で計算される場合は、「配当総額」「株主資本(自己資本)」の定義の確認は忘れずに!
