よく比較されるNISAとiDeCo。結局、どっちがいいの?どれくらい違いがあるの?そんな悩みをお持ちの方は必見です。今回は、具体的な数値を用いて両者を比較していきます。
前提
徹底比較するまえに、まずは比較の前提となる「30代男性」のステータスを明確にしておきます。
収入
収入は給与のみとし、給与収入は470万円としました。
上記金額は、国税庁のHPで公表されている「令和5年分 民間給与実態統計調査」の「第11表 企業規模別及び年齢階層別の給与所得者数・給与額」のその4,5に記載されている情報を元に税法上の大法人(資本金1億円以上)を除く給与の情報を集計し、10万円未満を切捨てて平均給与を計算しています。
給与総額 | 給与所得者数 | 平均給与 | |
30代男性 | 15,021,046百万円 | 3,202,585人 | 4,690千円 |
控除
税金計算における利用する控除は、社会保険料控除(70.5万円※給与の15%と仮定)、iDeCo控除(小規模企業共済等掛金控除)及び基礎控除(48万円※住民税は43万円)のみとしました。
徹底比較
これから具体的に計算をしますが、その前にこれから出てくる聞きなれない用語について説明します。
【課税所得】
給与所得-控除(社会保険料+iDeCo投資額+基礎控除)
【給与所得】
332万円(給与所得)=470万円(給与収入)-138万円(給与所得控除)
毎月1万円をどちらかに投資した場合
投資額 | 課税所得 | 税金合計 | 所得税 | 住民税 | |
NISA | 120,000円 | 213.5万円 | 334,400円 | 118,400円 | 216,000円 |
iDeCo | 142,248円 | 201.5万円 | 310,100円 | 106,100円 | 204,000円 |
差額 | 22,248円 | ▲12万円 | ▲24,300円 | ▲12,300円 | ▲12,000円 |
どちらも毎月1万円投資した場合、上記表の投資額はどちらも12万円になるはずです。しかし、iDeCoの投資額は142,248円と12万円よりも大きくなっています。
iDeCoはNISAと異なりどの証券会社で行ったとしても年間の手数料として最低2,052円(171円×12か月)がかかってしまうため、iDeCo内の運用資金は117,948円(120,000円-2,052円)とNISAより少なくなってしまいます。ただ、iDeCoは掛け金が控除となるため24,300円税金が少なくなります。それをNISAで運用することで、その分投資額を増やすことができます。
当然ですが、同じものに投資するなら、投資額が大きい方が資産の拡大も早くなります。言い換えると、NISAよりiDeCoの投資を優先した方が、資産の拡大は早くなります。
毎月2万円をどちらかに投資した場合
投資額 | 課税所得 | 税金合計 | 所得税 | 住民税 | |
NISA | 240,000円 | 213.5万円 | 334,400円 | 118,400円 | 216,000円 |
iDeCo | 283,648円 | 189.5万円 | 288,700円 | 96,700円 | 192,000円 |
差額 | 43,648円 | ▲24万円 | ▲45,700円 | ▲21,700円 | ▲24,000円 |
投資額を1万円から2倍の2万円に変更したため、差額はどれも2倍になりそうです。ただ、所得税、投資額は2倍以下になっています。これは所得税が、課税所得が195万円以下になり所得税率が当初の10%から5%となり減少する割合が小さくなるためです。
所得税の税率については、詳しく知りたい方は以下の国税庁のHPをみてみてください。
差額分を20年運用した場合
毎月の投資額は、上記2つのそれぞれの差額を12等分した金額を毎月積み立てることとします。また、運用の期待リターンは5%、運用期間は20年間とします。結果は、以下の表のようになります。
投資額 | 想定運用結果 | 投資元本 | 運用益 | |
毎月1万円 | 1,854円/月 | 762,056円 | 444,960円 | 317,096円 |
毎月2万円 | 3,637円/月 | 1,494,929円 | 872,880円 | 622,049円 |
差額のみを毎月運用したとしても20年間運用したとすると、結構な額になりますよね。少額でも続けることが大きな差につながるということですね!
なお、具体的な計算は、楽天証券の積立かんたんシミュレーションを用いて計算しました。条件を変えて計算したい方は、以下のリンクからしてみてください。

注意点
これらのシミュレーションにはいくつか注意が必要です。
NISAとiDeCoは同じ投資商品で運用を前提
NISAとiDeCoでは、NISAの方が投資商品の選択肢が広くなっています。そのため、もともと運用しようとしていた投資商品がiDeCoでは投資できないということもあり得ます。投資商品がことなれば、当然上記シミュレーションのような結果とは異なる結果となってしまいます。iDeCo口座を開設する前に、その証券会社で同じ商品へ投資可能か確かめてください。
例えば、NISAで人気の投資信託であるeMAXIS SlimシリーズのオールカントリーやS&P500にiDeCoで投資できる証券会社は少なくなっています。詳細は、以下の三菱UFJアセットマネジメントのHPを参考にされてください。
iDeCoは受取時に課税される可能性がある
運用時は、NISAよりiDeCoの方が資産が拡大しやすいですが、iDeCoは取崩時に退職所得や雑所得(公的年金等)として課税される場合があります。ただし、勤務先の退職金がない場合や比較的少額の場合は、あまり気にする必要はありません。
なぜなら、退職所得は、給与等と比べ控除額が多く設定されており、退職金+iDeCoの総額が控除額の範囲内であれば、課税されないからです。例えば、22歳で就職し60歳で退職した場合、勤続年数は38年となるため、控除額は2,240万円(800万円+(38年-20年)×80万円)となります。
iDeCoは基本的に60歳まで引き出し不可
iDeCoは、個人型確定拠出年金であり、自分で運用して将来の年金とするために税制上優遇された制度です。そのため、最低でも60歳までは引き出しが原則不可となっています。NISAはいつでも運用商品を売却し、資金を引き出すことができますが、iDeCoは、運用商品を売却することはできますが、資金を引き出すことはできません。
ただNISAやiDeCoは、当然元本割れのリスクがあるため短期的に必要な資金を運用すべきではありません。そう考えると、途中引き出し不可は知っておく必要はありますが、よく言われるiDeCoのデメリットにはならないはずです。これをデメリットと考える方は、本来投資に回すべきではない資金まで投資に回しているはずなので一度、投資資金の見直しをしてみてください。
おわりに
今回は、よく比較されるNISAとiDeCoの徹底比較を30代男性を前提に具体的な数字を用いて行いました。以前の記事でも書いていますが、基本的にはNISAよりもiDeCoに優先して投資をおススメします。これは、シミュレーション結果をみるとわかるように効率的に資産が拡大するためです。
退職金が比較的多い方は、その金額+iDeCoの運用額が控除額の範囲内かについては、一度試算してみください。実際には、将来多少の納税が発生したとしても、支払時期をかなり先送りできるためiDeCoが有利になるはずです。
まだiDeCoを始めていないという方は、ぜひ口座を開設して初めてみてください。年末調整の時に、iDeCoの控除証明書の提出はお忘れないようにしましょうね!忘れると手数料分NISAの方が有利になってしまいますからね。
